半自動溶接とは?「ワイヤーが自動=簡単」が間違いな理由を経験者が解説
半自動溶接とは、溶接ワイヤーを機械で連続的に送りながら、作業者がトーチを手で動かして金属を接合するアーク溶接です。
「半自動」という名前から、機械が自動で溶接してくれる方法だと思われることがあります。
しかし、自動で行われるのは主にワイヤーの供給です。
以下の操作や判断は、基本的に作業者が行います。
- 電流・電圧の調整
- トーチの角度調整
- ワイヤーの突き出し長さの管理
- 移動速度の調整
- 溶接線の狙い
- アークや溶融池の観察
- 溶接後の品質確認
半自動溶接は、被覆アーク溶接よりもアークを発生させやすいと感じる初心者もいます。
ただし、アークを出しやすいことと、十分な強度を持つ溶接が簡単にできることは別です。
私は専門学校で半自動溶接を学び、入社後は製造現場で本溶接やロボット溶接に関わりました。
学校では安定してできた溶接でも、現場では板厚や姿勢、製品形状、電流・電圧が変わり、同じ感覚ではうまくいかないことがありました。
この記事では、半自動溶接の仕組みや種類、難しい理由、電流・電圧、資格、安全対策まで、実際の経験を交えて解説します。
この記事の結論
半自動溶接は、ワイヤーを連続供給できるため、作業効率に優れた溶接方法です。
一方で、品質を安定させるには、次の要素を組み合わせて調整する必要があります。
- 身体の姿勢
- トーチ角度
- 突き出し長さ
- 移動速度
- 電流・電圧
- シールドガス
- 母材の状態
「始めやすいこと」と「高品質な溶接を安定して行えること」は同じではありません。
半自動溶接とは?
半自動溶接は、細い溶接ワイヤーを機械で連続的に送り、ワイヤーと母材の間にアークを発生させて接合する方法です。
ワイヤーは電極として働くと同時に、自ら溶けて溶接金属の一部になります。
ワイヤーと母材がアーク熱によって溶けると「溶融池」が形成され、冷えて固まることで金属同士が接合されます。
CO2溶接やMAG溶接、MIG溶接などのガスシールド方式では、ノズルからシールドガスを流し、アークや溶融池を空気から保護します。
なぜ「半自動」と呼ばれるのか?
半自動と呼ばれる理由は、ワイヤーの供給が自動である一方、トーチの移動や条件調整は作業者が行うからです。
| 作業 | 機械が行う部分 | 作業者が行う部分 |
|---|---|---|
| ワイヤー供給 | ワイヤーを連続的に送る | ワイヤーや送給条件を選ぶ |
| トーチ移動 | 原則として行わない | 溶接線に沿って動かす |
| 条件設定 | 機種によって補助機能がある | 電流・電圧などを決める |
| 姿勢・角度 | 行わない | 身体とトーチを安定させる |
| 品質確認 | 一部設備では監視できる | アーク、ビード、欠陥を確認する |
被覆アーク溶接では、短くなった溶接棒を交換しながら作業します。
半自動溶接ではワイヤーが連続して供給されるため、長いビードや繰り返し作業に向いています。
ただし、ロボットがトーチまで動かすロボット溶接や全自動溶接とは異なります。
半自動溶接機の基本的な仕組み
【ここに「半自動溶接機の基本構成図」を挿入】
一般的なガスシールド方式の半自動溶接では、主に次の機器を使用します。
- 溶接電源
- ワイヤーリール
- ワイヤー送給装置
- 溶接トーチ
- ライナー
- コンタクトチップ
- ノズル
- ガスボンベ
- 圧力調整器・流量計
- 母材側ケーブル
ワイヤーは、送給装置からトーチケーブル内部のライナーを通り、コンタクトチップまで送られます。
コンタクトチップからワイヤーへ電流が伝わり、ワイヤーが母材へ近づくとアークが発生します。
同時にノズルからシールドガスが流れ、溶接部を保護します。
次のような状態になると、ワイヤー送給やアークが不安定になることがあります。
- トーチケーブルを強く曲げている
- ライナーが摩耗・汚損している
- コンタクトチップが摩耗している
- 送給ローラーの圧力が適切でない
- ワイヤーにさびや汚れがある
- ワイヤー径と部品が合っていない
アークが不安定なときは、電流・電圧だけでなく、トーチや送給装置の状態も確認することが重要です。
半自動溶接の主な種類
半自動溶接は、使用するシールドガスやワイヤーによって分類されます。
初心者が混乱しやすいのが、CO2溶接、MAG溶接、MIG溶接の違いです。
CO2・MAG・MIG溶接の違い
| 種類 | 主なシールドガス | 主な適用材料 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| CO2溶接 | 100%CO2 | 主に炭素鋼 | 導入しやすいが、条件によってスパッタが多い |
| MAG溶接 | Ar+CO2、Ar+O2など | 炭素鋼、ステンレス鋼など | アークやビードを安定させやすい |
| MIG溶接 | Ar、Heなど | アルミニウムなどの非鉄金属 | 酸化を抑えながら溶接しやすい |
技術分類上、CO2は活性ガスであるため、CO2溶接はMAG溶接の一種です。
ただし、日本の現場では、100%CO2を使用する方法を「CO2溶接」、ArとCO2などの混合ガスを使う方法を「MAG溶接」と呼び分けることがあります。
CO2溶接
CO2溶接は、100%の炭酸ガスをシールドガスとして使用する方法です。
主に炭素鋼の溶接に使われ、建築鉄骨、製缶、機械フレーム、建設機械、工場設備などで広く採用されています。
比較的導入しやすく、深い溶け込みを得やすい一方、条件によってはスパッタが多く発生します。
現在は、波形制御によってスパッタを抑える機能を備えたデジタル溶接機もあります。
そのため、CO2溶接だから必ず大量のスパッタが出るとは限りません。
MAG溶接
MAG溶接は、CO2や酸素などの活性ガスを含むシールドガスを使用する方法です。
日本では、ArとCO2の混合ガスを使う方法を、CO2溶接と区別してMAG溶接と呼ぶことがあります。
CO2溶接と比べると、条件によって次の特徴があります。
- アークを安定させやすい
- スパッタを抑えやすい
- ビード外観を整えやすい
- パルス溶接などへ対応しやすい
ただし、ワイヤーには使用できるシールドガスが定められています。
ワイヤーとガスの組み合わせが適切でなければ、溶接金属の強度やじん性を保証できない可能性があります。
MIG溶接
MIG溶接は、アルゴンやヘリウムなどの不活性ガスを使用する方法です。
主に次のような材料で使われます。
- アルミニウム
- マグネシウム
- 銅・銅合金
- ニッケル合金
ステンレス鋼をMIGまたはMAGで溶接する場合もあります。
ただし、ステンレス鋼は鉄を主成分とする鉄鋼材料であり、非鉄金属ではありません。
また、使用するガスに少量でもCO2や酸素などの活性ガスが含まれる場合は、技術的にはMAG溶接に分類されます。
ノンガス半自動溶接
ノンガス半自動溶接は、外部のシールドガスを使わず、専用のフラックス入りワイヤーを使用する方法です。
セルフシールドアーク溶接と呼ばれる方式では、ワイヤー内部のフラックスからガスやスラグが生じ、溶接部を保護します。
主な特徴は次のとおりです。
- ガスボンベが不要
- 風の影響を比較的受けにくい
- 屋外作業に対応しやすい
- ヒュームやスパッタが多くなりやすい
- スラグ除去が必要になる場合がある
家庭用のノンガス溶接機と、建築鉄骨などで使われるセルフシールド溶接では、設備、ワイヤー、出力、施工条件が大きく異なります。
家庭用の溶接機については、別記事で詳しく解説します。
関連記事:家庭用半自動溶接機とは?100V・200V・ノンガスの違いと注意点
【準備中】
半自動溶接で使用するワイヤー
半自動溶接では、シールドガスだけでなく、使用するワイヤーも重要です。
ワイヤーは大きく次の3種類に分けられます。
| 種類 | 構造 | 外部ガス | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| ソリッドワイヤー | 中まで金属 | 必要 | CO2・MAG・MIGで広く使用 |
| ガスシールド用FCW | 内部にフラックス | 必要 | 溶着量や姿勢、ビード形状を重視 |
| セルフシールド用FCW | 内部に専用フラックス | 原則不要 | 屋外や現場作業に対応しやすい |
FCWは「Flux Cored Wire」の略で、フラックス入りワイヤーを意味します。
フラックス入りワイヤーだからといって、すべて外部ガスが不要なわけではありません。
CO2や混合ガスを併用するガスシールド用FCWも広く使われています。
ワイヤー径はどう選ぶ?
ワイヤー径は、次の条件を考慮して選びます。
- 母材の板厚
- 溶接電流
- 必要な溶着量
- 溶接姿勢
- 継手形状
- 溶接機やトーチの仕様
- ワイヤーの種類
一般的には、小径ワイヤーは薄板や低電流域、太径ワイヤーは厚板や大電流域で使われます。
ソリッドワイヤーには0.6~1.6mmなどの径があり、現場では1.2mmが使われることも多くあります。
私が資格試験や勤務先で使用したのも、主に1.2mmのソリッドワイヤーでした。
ただし、ワイヤー径だけで溶接可能な板厚を判断することはできません。
使用する溶接機、姿勢、継手、施工要領なども含めて判断します。
半自動溶接のメリット
ワイヤーを連続供給できる
被覆アーク溶接のように、短くなった溶接棒を何度も交換する必要がありません。
長いビードや繰り返し作業に向いています。
作業効率を高めやすい
半自動溶接は、細径ワイヤーを連続的に供給できるため、溶着速度を高めやすい方法です。
製缶、鉄骨、機械フレームなど、生産性が求められる現場で多く使われています。
アークを発生させやすいと感じる人もいる
被覆アーク溶接では、溶接棒を母材へ接触させてアークを発生させ、棒がくっつかないよう距離を取る必要があります。
半自動溶接は、トーチスイッチを押すとワイヤーが供給されるため、アークスタートでつまずきにくいと感じる初心者もいます。
ただし、アークが出せることと、適切な溶け込みを得られることは別です。
ロボット溶接へ応用しやすい
半自動溶接のワイヤー供給方式は、ロボット溶接にも利用されています。
私が勤務していた現場でも、ロボットが同じ部分を繰り返し溶接し、人が別の箇所を手作業で溶接していました。
半自動溶接のデメリット
シールドガスを使う方法は風に弱い
風によってシールドガスが流されると、溶融池を十分に保護できなくなります。
その結果、ブローホールやピットなどの欠陥が発生する可能性があります。
屋外だけでなく、工場内の扇風機やスポットクーラーの風にも注意が必要です。
スパッタが発生する
特にCO2溶接では、条件によってスパッタが多く発生します。
スパッタは、次の問題につながります。
- 製品への付着
- ノズルへの付着
- 清掃や仕上げ時間の増加
- 火傷や火災
- ガス流やワイヤー送給への悪影響
トーチの取り回しに制約がある
トーチには、ワイヤー、電気、ガスを送るケーブルが接続されています。
狭い場所や無理な姿勢では、ケーブルに引っ張られてトーチが安定しないことがあります。
条件設定が品質に直結する
電流、電圧、突き出し長さ、移動速度などのバランスが崩れると、アークやビードが不安定になります。
機械の数値を合わせるだけで、すべての条件に対応できるわけではありません。
半自動溶接が簡単ではない理由
半自動溶接では、ワイヤーの供給は機械が行います。
しかし、溶接品質を左右する動作の多くは、作業者が調整しなければなりません。
身体の姿勢を安定させる必要がある
トーチを安定させるには、最初に身体の姿勢を整える必要があります。
腕だけでトーチを動かすと、身体の揺れがそのままビードへ現れます。
溶接を始める前に、次の点を確認します。
- 足元が安定しているか
- 溶接終了位置まで無理なく動けるか
- 肘や手首を支えられるか
- トーチケーブルに引っ張られないか
- 溶融池を確認できる姿勢か
フリーハンドにこだわらず、支えられる場所を利用することも重要です。
突き出し長さを一定に保つ必要がある
突き出し長さとは、コンタクトチップの先端からワイヤー先端までの長さです。
トーチと母材の距離が変わると、突き出し長さも変化します。
その結果、実際の溶接電流、溶け込み、アーク状態が変わる可能性があります。
ノズルの先端だけを見るのではなく、コンタクトチップと母材の距離を意識することが大切です。
トーチ角度を一定にする必要がある
トーチ角度が途中で変わると、アークが狙った位置から外れます。
すみ肉溶接では、片側だけに溶接金属が寄ったり、融合不足が起きたりすることがあります。
前後方向の角度と、左右方向の角度を分けて考えると調整しやすくなります。
移動速度を一定にする必要がある
移動速度が遅すぎると、ビードが盛り上がり、入熱や変形が大きくなる可能性があります。
反対に、速すぎると、ビードが細くなり、溶け込みや融合が不足する可能性があります。
最初は短い直線から練習し、同じ条件で複数本のビードを引いて比較することが重要です。
電流・電圧だけでは解決できない
条件設定は重要ですが、すべての問題を数値だけで解決できるわけではありません。
溶接条件が合っていても、姿勢、角度、距離、速度が不安定であれば、品質は安定しません。
半自動溶接では、機械の設定と作業者の動作を両方整える必要があります。
電流・電圧・ワイヤー送給速度の関係
半自動溶接で初心者が混乱しやすいのが、電流と電圧の関係です。
多くのCO2・MAG溶接機では、電流設定は実質的にワイヤー送給速度の設定として働きます。
送られたワイヤーが溶けることで、実際の溶接電流が決まります。
| 調整項目 | 主に変化する部分 | 合わない場合に起きやすいこと |
|---|---|---|
| ワイヤー送給速度・電流設定 | 溶着量、アークの強さ、溶け込み | ワイヤーが母材へ突っ込む、溶け込み不足 |
| 電圧 | アーク長、ビード幅 | ワイヤーを弾く、アンダーカット |
| 突き出し長さ | 実電流、溶け込み | ビードや溶け込みがばらつく |
| 移動速度 | 入熱、ビード幅、高さ | 穴あき、盛りすぎ、溶け込み不足 |
| トーチ角度 | アークの方向、ビード形状 | 片寄り、融合不足 |
| ガス流量・シールド状態 | 溶融池の保護 | ブローホール、ピット |
電圧が低すぎる場合
電圧が低すぎるとアーク長が短くなり、ワイヤーが母材へ当たって「パンパン」と弾くような状態になることがあります。
電圧が高すぎる場合
電圧が高すぎるとアーク長が長くなり、ビードが広がりすぎたり、アンダーカットが発生したりする可能性があります。
条件によっては、ワイヤーがコンタクトチップへ溶着することもあります。
一元調整と個別調整
溶接機には、一元調整と個別調整を備えた機種があります。
- 一元調整:電流設定に応じて、目安となる電圧を溶接機が設定する
- 個別調整:作業者が電流と電圧を個別に設定する
一元調整でも、すべての母材に最適な条件が自動で決まるわけではありません。
突き出し長さ、板厚、姿勢、継手形状などに合わせて微調整します。
専門学校と現場では条件が大きく違った
私が専門学校と勤務先で経験した半自動溶接の条件には、次のような違いがありました。
| 環境 | 電流 | 電圧 |
|---|---|---|
| 専門学校 | 約210~230A | 約22~24V |
| 勤務先 | 約340~350A | 約32~36V |
勤務先では、母材の板厚や温度、季節、時間帯、周囲の設備状況などを確認しながら、電圧を微調整していました。
学校では、一定の試験材を練習しやすい姿勢で溶接できます。
しかし、現場では製品ごとに次の条件が変わります。
- 板厚
- 継手形状
- 隙間
- 母材温度
- 溶接姿勢
- 製品の大きさ
- 必要な溶け込み
- 溶接順序
- 作業時間
学校で学ぶ基礎は重要ですが、学校の設定値や動作を、そのまま現場へ持ち込めるとは限りません。
注意
上記の電流・電圧は、筆者が特定の設備や製品で経験した数値です。一般的な推奨条件ではありません。実際の作業では、溶接施工要領書、ワイヤーメーカーの条件表、溶接機の取扱説明書、職場の指示を優先してください。
半自動溶接の基本的な作業手順
半自動溶接では、トーチスイッチを押す前の準備が重要です。
- 図面・材料・溶接指示を確認する
- ワイヤー・ガス・極性を確認する
- 母材表面を清掃する
- 送給装置・チップ・ノズルを点検する
- 母材側ケーブルを接続する
- ガス流量・ガス漏れを確認する
- 試験材で電流・電圧を確認する
- 仮付け・寸法を確認する
- 本溶接を行う
- スパッタ除去・外観確認を行う
母材を清掃する
母材表面に次のものが残っていると、気孔やアーク不安定の原因になります。
- 水分
- 油
- さび
- 塗料
- めっき
- 汚れ
トーチ先端を確認する
作業前に次の点を確認します。
- ノズルにスパッタが詰まっていないか
- コンタクトチップが摩耗していないか
- ワイヤー径とチップ径が合っているか
- ガスが正常に流れているか
- ワイヤーが滑らかに送られているか
試験材で条件を確認する
可能であれば、本番製品へすぐにアークを出さず、同じ材質と板厚に近い試験材で条件を確認します。
確認する主な項目は次のとおりです。
- アーク音
- スパッタ量
- ビード幅
- ビード高さ
- 母材へのなじみ
- 溶け込み
- アンダーカット
- ワイヤー送給状態
半自動溶接が上達するコツ
初心者は、一度にすべてを直そうとすると、失敗の原因が分からなくなります。
次の順番で、一つずつ確認するのがおすすめです。
- 安全ルールを覚える
- 身体とトーチを安定させる
- 突き出し長さを一定にする
- トーチ角度を一定にする
- 移動速度を一定にする
- 溶融池を観察する
- 電流・電圧を少しずつ調整する
- 失敗したビードを確認する
- 熟練者の動きを観察する
- 同じ条件で繰り返す
私は細かい作業が得意ではなく、何度練習してもうまくいかない時期がありました。
そのため、先生に失敗の原因を見てもらい、隣で上手に溶接している人の姿勢やトーチの動きを観察しました。
距離、角度、速度を一つずつ修正した方が、改善した部分と失敗の原因を把握しやすくなります。
半自動溶接で起きやすい欠陥
| 欠陥・不具合 | 考えられる主な原因 |
|---|---|
| ブローホール・ピット | 風、ガス不足、母材の汚れ、水分、さび |
| スパッタが多い | 電流・電圧の不一致、突き出し長さ、ワイヤー・ガス |
| 溶け込み不足 | 電流不足、速度が速い、狙いのずれ、開先不足 |
| 融合不足 | 角度不良、速度不適切、母材への熱不足 |
| アンダーカット | 電圧が高い、速度が速い、狙い・角度不良 |
| 穴あき | 薄板への入熱過多、速度が遅い、隙間が大きい |
| ワイヤー送給不良 | ライナー、ローラー、チップ、トーチの曲がり、ワイヤーのさび |
欠陥の原因は一つとは限りません。
例えばブローホールは、ガス流量だけでなく、風、ノズルの詰まり、母材表面の水分や油、トーチ角度などが重なって発生することがあります。
関連記事:溶接欠陥の種類と原因|ブローホール・アンダーカット・未融合を図解
【準備中】
半自動溶接と他の溶接方法の違い
| 比較項目 | 半自動溶接 | 被覆アーク溶接 | TIG溶接 |
|---|---|---|---|
| 電極・溶加材 | 連続供給ワイヤー | 被覆された溶接棒 | タングステン電極と必要に応じた溶加棒 |
| 作業速度 | 比較的速い | 普通 | 比較的遅い |
| スパッタ | 条件により発生 | 発生する | 非常に少ない |
| スラグ | ワイヤーによる | 発生する | 基本的に発生しない |
| 屋外作業 | ガス方式は風に弱い | 比較的対応しやすい | 風に弱い |
| 主な用途 | 製缶、鉄骨、機械フレーム | 現場、補修、鉄骨 | 配管、薄板、ステンレス、アルミ |
| 初心者が苦労しやすい点 | 条件設定、トーチ操作 | アーク長、棒角度 | 両手操作、入熱管理 |
どの溶接方法が一番難しいかは、材質、板厚、姿勢、品質基準によって変わります。
関連記事:半自動溶接・TIG溶接・被覆アーク溶接の違い
【準備中】
半自動溶接が使われる仕事
半自動溶接は、鉄を扱う幅広い現場で使用されています。
- 建築鉄骨
- 製缶
- 産業機械
- 建設機械
- 農業機械
- 自動車・車両
- 工場設備
- 造船
- 設備補修
私は、駅、ホテル、原子力発電所に関係する廃材庫、コンサートドームなどに使用される製品の溶接に関わりました。
同じ半自動溶接でも、業界や製品によって、使用ワイヤー、シールドガス、板厚、姿勢、検査基準などが異なります。
関連記事:溶接工の仕事内容とは?1日の流れ・作業工程・扱う製品を経験者が解説
【準備中】
半自動溶接に必要な資格
半自動溶接に関係する教育や資格は、大きく次の3つに分けられます。
| 区分 | 目的 | 代表例 |
|---|---|---|
| 特別教育 | 対象業務を安全に行うための教育 | アーク溶接等特別教育 |
| 技能評価資格 | 溶接技量を客観的に証明する | JIS半自動溶接技能者評価試験 |
| 関連講習 | 周辺作業を行うために必要 | 玉掛け、クレーンなど |
アーク溶接等特別教育
事業者が労働者をアーク溶接等の業務へ就かせる場合は、対象者へ特別教育を実施する必要があります。
特別教育は、安全に作業するための教育です。
溶接技量を証明するJIS資格とは目的が異なります。
JIS半自動溶接技能者評価試験
JIS半自動溶接技能者評価試験は、溶接方法、板厚、姿勢、裏当て金の有無などによって資格区分が分かれます。
代表的な資格には次のようなものがあります。
- SA-2F
- SA-2H
- SN-2F
- SA-3F
- SA-3V
- SA-3H
私は専門学校で薄板の基本級を取得し、入社条件としてSA-2FとSA-2Hを取得しました。
入社後には、SA-3F、SA-3V、SA-3Hを取得しています。
資格の費用、更新、試験内容については、別記事で詳しく解説します。
関連記事:溶接に必要な資格一覧|未経験者が取る順番・費用・難易度を解説
【準備中】
半自動溶接の安全対策
半自動溶接には、次の危険があります。
- アーク光
- 火傷
- スパッタ
- 火災
- 感電
- 溶接ヒューム
- ガス
- 酸欠
- 重量物
アーク光から目と皮膚を守る
- 適切な遮光度の溶接面を使用する
- 長袖の作業服を着用する
- 首元、手首、腰を露出しない
- 革手袋やエプロンを使用する
- 周囲へ遮光カーテンを設置する
私は、ロボット溶接から離れた位置で背中を向けていたにもかかわらず、服の隙間から露出していた腰が日焼けした経験があります。
直接アークを見ていなくても、反射光や周囲のアーク光には注意が必要です。
溶接ヒュームを吸い込まない
- 局所排気や全体換気を行う
- 適切な呼吸用保護具を使用する
- マスクの密着を確認する
- フィルターを適切に交換する
- ヒュームが顔へ流れる姿勢を避ける
火傷・火災を防ぐ
- 周囲の可燃物を除去する
- 防火シートを使用する
- 壁や板の裏側も確認する
- 消火器の位置を確認する
- 作業終了後に残火を確認する
- 作業服の穴やほつれを点検する
私は、防炎性の作業服に開いていた小さな穴からスパッタが入り、服が燃えた経験があります。
また、スパッタ防止板の裏側に置かれていた可燃物が燃えた事例もありました。
見えている側だけでなく、火花が到達する裏側まで確認することが重要です。
関連記事:溶接作業の危険性と安全対策|火傷・感電・ヒューム・火災を防ぐ方法
【準備中】
半自動溶接は初心者でもできる?
初心者でも、半自動溶接を始めることはできます。
ワイヤーが自動供給されるため、被覆アーク溶接よりアークスタートでつまずきにくいと感じる人もいます。
しかし、初心者がすぐに次のことをできるわけではありません。
- 一定のビードを作る
- 十分な溶け込みを確保する
- 欠陥を防ぐ
- 姿勢が変わっても対応する
- 板厚に合わせて条件を設定する
- 本番製品を短時間で仕上げる
最初は安全を優先し、距離、角度、速度、条件を一つずつ身につけることが大切です。
よくある質問
Q1.半自動溶接とロボット溶接の違いは何ですか?
半自動溶接では、ワイヤー供給は自動ですが、トーチは作業者が手で動かします。
ロボット溶接では、設定されたプログラムや軌道に基づいて、ロボットがトーチを動かします。
ただし、ロボット溶接でも、条件設定、治具、ワイヤー交換、検査、補修などには人が関わります。
Q2.CO2溶接とMAG溶接は同じですか?
技術分類上、CO2溶接はMAG溶接の一種です。
ただし、日本の現場では、100%CO2を使う方法をCO2溶接、ArとCO2などの混合ガスを使う方法をMAG溶接と呼び分けることがあります。
Q3.フラックス入りワイヤーはすべてノンガスですか?
いいえ。
フラックス入りワイヤーには、外部のシールドガスを併用する種類と、外部ガスを使わないセルフシールド用があります。
使用前にワイヤーの仕様を確認してください。
Q4.半自動溶接の電流を上げるとどうなりますか?
多くのCO2・MAG溶接機では、電流設定を上げるとワイヤー送給速度が上がります。
溶着量やアークの強さが増しますが、電圧、突き出し長さ、移動速度が合っていなければ、ワイヤーを弾く、スパッタが増えるなどの問題が起こります。
Q5.きれいなビードなら強度も十分ですか?
必ずしも十分とは限りません。
外観がきれいでも、内部に溶け込み不足、融合不足、ブローホールなどが発生している可能性があります。
外観だけでなく、条件や施工方法、必要に応じた検査を含めて判断します。
Q6.半自動溶接には資格が必要ですか?
求人へ応募する段階で、JIS資格が必須とは限りません。
ただし、事業者が労働者をアーク溶接等の業務へ就かせる場合は、アーク溶接等特別教育が必要です。
技量を客観的に証明する資格には、JIS半自動溶接技能者評価試験があります。
Q7.半自動溶接とTIG溶接はどちらが難しいですか?
作業内容によって変わります。
TIG溶接は両手操作や入熱管理が難しい一方、半自動溶接でも、厚板、立向き、横向き、高い品質基準では難易度が上がります。
溶接方法の名前だけで、一律に難易度を決めることはできません。
まとめ
半自動溶接とは、ワイヤーを機械で連続的に送りながら、作業者がトーチを手で動かすアーク溶接です。
主な種類には、次の方法があります。
- CO2溶接
- MAG溶接
- MIG溶接
- セルフシールドアーク溶接
半自動溶接は、ワイヤーを連続供給できるため、作業効率に優れています。
一方で、品質を安定させるには、次の要素が重要です。
- 身体の姿勢
- トーチ角度
- 突き出し長さ
- 移動速度
- 電流・電圧
- シールドガス
- 母材の清掃
- ワイヤー送給状態
ワイヤーが自動で出るからといって、簡単に強度のある溶接ができるわけではありません。
初心者でも始めることはできますが、アークを出せることと、十分な品質を確保できることは別です。
最初は安全を優先し、一つずつ動作と条件を身につけていきましょう。
参考元・引用元
公的機関・専門団体
一般社団法人日本溶接協会
「半自動溶接技能者資格」
https://www.jwes.or.jp/qualifications/wo/semi-automatic/
一般社団法人日本溶接協会
「アーク溶接技術発展の系統化調査」
https://www-it.jwes.or.jp/kahaku/pdf/02.pdf
一般社団法人日本溶接協会
「ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤの基礎」
https://www-it.jwes.or.jp/we-com/bn/vol_50/sec_1/1-1.pdf
一般社団法人日本溶接協会
「マグ溶接ソリッドワイヤとフラックス入りワイヤの違い」
https://www-it.jwes.or.jp/qa/details.jsp?pg_no=0060010090
一般社団法人日本溶接協会
「炭酸ガス溶接用ワイヤの径の選び方」
https://www-it.jwes.or.jp/qa/details.jsp?pg_no=0090010050
一般社団法人日本溶接協会
「ステンレス鋼溶接技能者資格」
https://www.jwes.or.jp/qualifications/wo/stainless/
厚生労働省
「安全衛生特別教育規程」
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=74085000&dataType=0&pageNo=1
神奈川労働局
「金属アーク溶接等作業に従事する皆様へ」
https://jsite.mhlw.go.jp/kanagawa-roudoukyoku/content/contents/000694679.pdf
メーカー技術情報
株式会社ダイヘン
「溶接における電流・電圧の設定値と出力値」
https://www.daihen.co.jp/products/welder/faq/basic/q5.html
株式会社ダイヘン
「CO2/MAG溶接の一元・個別電圧調整」
https://www.daihen.co.jp/products/welder/faq/basic/q1.html
パナソニック
「溶接機の点検・トーチケーブルとワイヤー送給」
https://industrial.panasonic.com/content/data/WS/PDF/sc-co2mag.pdf
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